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スタートアップ関連税制の強化について
2023年03月22日
こんにちは。税理士法人 久保田会計事務所 経営財務部です。
今回は、昨年末に発表された令和5年度税制改正大綱から、
スタートアップ関連税制の強化についてお話させて頂きます。
スタートアップとは、新しいビジネスモデルや市場を開拓することで、
短期間のうちに急激な成長と巨額の対価を狙う企業や事業のことです。
わが国でもスタートアップの成長を促していく上で
3つの段階 『創業』『事業展開』『出口』における
インセンティブの充実が極めて重要だと考えられ、
令和5年度税制改正大綱に記載されていましたので改正事項を各段階ごとにまとめてみました。
『創業』に対しては、創業時に必要な資金不足の現状を踏まえて、
保有する株式を売却してスタートアップに再投資する場合の優遇税制を創設し、
スタートアップへの資金供給を強化することで
スタートアップ企業の増加・日本の起業率の向上を目的としています。
スタートアップの創業時(プレシード・シード期)には、資金調達方法が多くあります。
例えば、ベンチャーキャピタル(設立前後のスタートアップ企業やベンチャー企業に対して
出資を行う会社)からの出資や金融機関からの融資、
助成金エンジェル投資家(起業して間もない企業に資金を出資する投資家)からの出資などがあります。
しかし日本のスタートアップ投資は、事業会社と金融機関が中心で、
スタートアップの資金需要に十分に応えられていないという課題があります。
そこで今回の令和5年税制改正大綱に、スタートアップ企業の創業時の、
企業育成を金銭面や手続きの簡素化での支援をする方策が一部示されていたので紹介します。
具体的には、①スタートアップへの再投資に係る非課税措置
② 確認手続きの簡略化 ③対象企業の見直しなどがあります。
① スタートアップへの再投資に係る非課税措置(エンジェル税制の見直し)
現行制度では、投資家が保有株式の売却益をスタートアップに再投資すると、
再投資の時点では、保有株式の売却益のうち再投資額分への課税が繰り延べられ、
スタートアップ株を売却する際に再投資分に相当する金額に課税されます。
この仕組みを、投資家が株式を売却して得た利益をスタートアップ企業への再投資や起業に使う場合、
売却益のうち最大20億円まで投資額に相当する分を非課税とする事で
日本のスタートアップ投資の資金需要の問題を金融機関や事業会社のみならず
投資者からの出資を促すことでスタートアップに支援する事を目的としています。
②申請手続きの簡素化
確定申告時には、沢山の書類を必要としていましたが、
簡素化を図るための対策として具体的には、
設立日における貸借対照表/確定申告書別表1(1)/ 法人事業概況説明書 /
株式の発行を決議した書類/個人が取得した株式についての株式申込書が不要となり、
以前より使いやすい優遇税制となり投資家にとってスタートアップ企業への出資の後押しに繋がります。
③対象企業の見直し
現行のエンジェル税制の対象である未上場のスタートアップ企業に対して、
設立5年未満であったり出資金の比率が30%超、
営業損益が赤字等の要件を満たすなどの要件が課されます。
更に外部資本要件は、改正前では株主比率 5/6(83.3%)を超えてしまうと
エンジェル税制を受けられませんでしたが、
改正後は19/20(95%)になりエンジェル税制の対象となる企業が増える事が予想されます。
『事業展開』に対しては役員や会社の従業員に対するインセンティブの強化として、
税制適格ストックオプションの権利行使期間の延長が決定されました。
始めに、ストックオプションとは、会社が役員や従業員に対して特定の金額で
自社の株式を購入する権利を与える事を指します。
現行制度では、ストックオプションの付与を受けた時から最初の2年間は、
権利行使をする事が出来ません。
3年目から10年目の間の8年間で権利行使をする事が出来ます。
今回の、令和5年度税制改正大綱の内容としては、
設立から5年未満の会社であることや、未上場の会社である事が条件としてありますが、
権利行使期間を更に5年間伸ばし3年目から15年目までを権利行使期間としました。
権利行使期間の延長の背景としては、経済産業省によると、
スタートアップ企業が創業してから上場までの年数の中央値は12年間超で推移し、
直近では14年とのことです。
設立から早い段階で発行したストックオプションにつき、
これまでの権利行使期間までに上場出来ないケースが多く発生している現状から
延長への改正が示されました。
また、会社から役員・従業員に無償でストックオプションを付与した場合、
いくつかの要件を満たすと、株式を譲渡するまで、所得税の課税が繰り延べられ、
所得の種類が、給与ではなく、株式の譲渡所得とすることが出来ます。
現行の要件のひとつに、
権利行使期間が付与決議から2年から10年であるものという要件があります。
その要件についても2年~15年に変更される予定となっています。
『出口』に対しては既存企業によるM&Aを促進させるために、
スタートアップ企業に限定し、既存発行株式の購入により取得した場合も
オープンイノベーション税制の対象とし、既存のオープンイノベーション促進税制については、
要件の見直しが行われました。
オープンイノベーション促進税制とは、
バイサイド企業が出資先であるスタートアップに対して出資をした時に出資額の25%
例えば1億円の出資をすれば2500万円の控除が、受けられる制度となっています。
しかし要件が厳しく、その要件の1つに、資本金増加要件がありました。
資本金増加要件とは、買う側の会社が出資をする際にスタートアップが、
新しく株式を発行する必要があり、ニューマネーを入れる必要がありました。
今回の改正ではこの要件を撤廃しました。
改正後は、取得価格要件が5億円以上であったり国内企業に限定などの要件が加わりますが、
資本金増加要件が不要になり、
既存株主からの購入でも税額控除の適用が受けられる様になりました。
今回のスタートアップ関連税制の強化によって政府が、
今後の日本経済において中国やアメリカのように企業文化を育てる事に注力しているのが分かります。
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是非参考にしてください。
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