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インボイス制度における売り手負担振込手数料の取扱い
2022年08月03日
こんにちは。税理士法人 久保田会計事務所 経営財務部です。
今回はインボイス制度における売り手負担の振込手数料の取り扱いについてご紹介します。
[支払手数料として課税仕入れに計上処理する方法]
売り手負担の場合、振込手数料を差し引いた金額が売り手の口座に振り込まれます。
この場合、売り手は売掛金の額と実際に振り込まれた金額の差額を支払手数料として処理し、
課税仕入れに計上している経理実務が多くなっています。
現行の区分記載請求書等保存方式では、税込み3万円未満の取引については、
請求書等の保存がなくても帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められています。
[インボイス制度では3万円未満の取引でも、原則、適格請求書等の保存が必要]
一方、インボイス制度においては3万円未満の取引について、
現行のように「帳簿のみ保存」による仕入税額控除は原則として認められません。
また、請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由がある場合の
「帳簿のみ保存」の特例も廃止されるため、
振込サービスに係る適格請求書等の保存が必要となります。
ここで、課税仕入れの相手方は誰なのかという疑問も生じるところですが、
課税仕入れの相手方を振込サービスを提供している金融機関とすれば、
買い手は売り手が負担すべき振込手数料を立て替えたにすぎず、
代金決済と同時に立替金が精算されたと整理することもできます。
この場合、売り手は、買い手が金融機関から受領した振込サービスに係る適格請求書と
立替金精算書(金融機関の名称、登録番号、振込手数料の金額等が記載されたもの)
の交付を受け、これを保存していれば仕入税額控除を受けることができるとのことです。
(国税庁『インボイス制度に関するQ&A問75参照』)。
[売上値引きとして対価の返還等で処理することもできる]
支払手数料として課税仕入れに計上しようとすると、
買い手から一定の協力を得ることが必要となります。
この点、買い手から協力を得るのが難しいケースも考えられますが、
売り手が振込手数料相当額を値引きしたと整理し、
売上に係る対価の返還等として処理することも可能です。
ただし、インボイス制度において、売上に係る対価の返還等が行われた場合には、
売り手から買い手に対して「適格返還請求書」を交付することが必要となるため、
この場合、売り手側に一定の事務負担が生じることになります。
売り手負担の振込手数料を、支払手数料として課税仕入れに計上するにせよ、
売上値引として対価の返還等として処理するにせよ、現行制度に比べて実務が煩雑になります。
[仕入明細書兼返還インボイス対応]
事前に売り手が振込手数料を負担することを双方で合意しているような場合、
買い手が作成する支払通知書等に、返還インボイスとして必要な事項を記載することで、
1枚の書類で対応することが可能となります。
買い手が仕入税額控除のために作成・保存している支払通知書等に、
値引きに関する返還インボイスとして必要な一定の事項が記載されていれば、
当事者間で、売り手の売上に係る対価の返還等の内容について確認されているためとのことです。
この場合、売り手は改めて返還インボイスを交付しなくても大丈夫です。
(国税庁『インボイス制度に関するQ&A問71参照)
[対価の返還等の年月日は振込日で可能]
買い手が作成する「支払通知書兼返還インボイス」で対応する場合、
返還インボイスの記載事項のうち「売上に係る対価の返還等を行う年月日」は
「販売代金の振込日」に記載すれば良いとのことです。
[当事者間で認識の摺り合わせが重要]
インボイス制度の導入に伴い、
『①買い手が売り手負担の振込手数料を立て替えたと整理するか』、
『②売り手が振込手数料相当額を値引きしたと整理するのか』により、
返還インボイス交付義務の有無等の対応が異なるため、
事前に当事者間でコミュニケーションをとり認識を摺り合わせることが重要となります。
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