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非課税資産の輸出等を行った場合の消費税の取扱い

2021年12月22日

経営財務部

こんちには。税理士法人 久保田会計事務所 経営財務部です。


今回は海外取引に係る消費税の論点として、

非課税資産の輸出等を行った場合の仕入税額控除の特例を取り上げてみたいと思います。



あまり一般的なものではありませんが、海外取引を行う際には抑えておきたい論点です。



【仕入税額控除】

ご存知のように、仕入税額控除は課税仕入れ等に係る消費税額のうち

一定の金額を、課税売上等に係る消費税額から控除する制度です。


控除税額の計算方法には個別対応方式や一括比例配分方式などがありますが、

基本的には非課税売上に対応する課税仕入れ等は控除対象とならないように制度は作られてます。

しかし、非課税資産の輸出等があった場合には例外規定があり、

非課税売上であるにも関わらず、これを課税資産の譲渡等とみなして

控除税額の計算を行うこととなります。(消費税法第31条)


消費税の計算にどのような影響があるのか、課税売上割合の計算を例にご説明します。



【課税売上割合】

課税売上割合は次の算式によって計算されます。


(課税売上割合)=(課税資産の譲渡等の税抜対価の額の合計額)/(資産の譲渡等の税抜対価の額の合計額)


非課税資産の譲渡等を行った場合、

通常であればその対価の額は分母には含めますが、分子には含めません。

しかし、非課税資産の譲渡等が輸出取引等に該当する場合には、

課税資産の譲渡等と見なすため、分子にも含めることとなります。


結果として課税売上割合は増加し、控除税額が増す効果が生じます。


【制度趣旨】

この規定は、日本の消費税が海外での販売価額に転嫁されることを防止するために

設けられたと言われています。



具体的には、障害者用物品の製造メーカーが

車イスを輸出した場合について考えると理解しやすいです。

車イスの譲渡は非課税取引に該当するため、消費税は課されません。

一方、車イスを製造するための部品を仕入れる際には消費税が課税されています。



もし消費税法第31条の規定がなければ、

部品仕入に係る消費税は仕入税額控除の対象外となります。

この場合、製造メーカーは控除対象外となった部品仕入に係る消費税を、

海外への輸出販売価格へ転嫁する可能性があります。



しかし、消費税法には「消費地課税主義」という原則があり、

日本国内において消費される物やサービスに対してのみ課税することを目的としているため、

このままでは「消費地課税主義」の原則に反することになります。



そこで、消費税法第31条により

車イスの部品仕入に係る消費税を特例的に控除対象とすることで、

車イスの海外での販売価格に転嫁されることを防止しているのです。



【最後に】

この制度には更に派生した論点があり、

本来は課税の対象ではないはずの国外移送が消費税計算に影響したり、

消費税法第31条の適用から除外される非課税資産があったりします。

海外取引に関する税制には複雑な論点が多く、慎重な検討が必要です。



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