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事業承継と相続法改正
2019年09月18日
こんにちは、経営支援事業部です。
今回は、令和元年7月1日に施行された改正相続法の中から
事業承継にも影響を与えうる「遺留分減殺請求権」と「特別受益制度」の改正について
ご紹介させていただきます。
遺留分減殺請求権とは、
被相続人が遺言によって特定の相続人に遺産を渡すと
意思表示をしている場合などでも、
その他の法定相続人には遺留分という最低限の取り分が確保されており、
その遺留分を請求できる権利のことをいいます。
例えば、相続人が長男と次男の二人、被相続人の財産が全て事業用資産であり、
非相続人が後継者である長男に全ての事業用資産を相続させるという遺言を残した場合、
次男は財産の4分の1(法定相続分2分の1の2分の1)について
遺留分減殺請求をすることができます。
改正前の制度では、上記ケースの場合、
事業用資産の4分の1が長男と次男の共有となってしまい、
その後の円滑な経営判断に支障を来すリスクが生じてしまいます。
今回の改正においては、遺留分は金銭債権化することになり、
長男は金銭による精算で事業用資産の共有を回避できることとなりました。
また、金銭を直ちに準備できないような場合は、
長男は裁判所に対して支払期限の猶予を求める事ができることとなりました。
相続の権利関係を金銭債権化による精算とすることで
共有状態という事業承継の支障を取り除く改正となりました。
次に特別受益制度の改正です。
特別受益とは、相続人が生前に被相続人から特別に利益を受けていることをいいます。
共同相続人の中に特別受益を受けていた者がいる場合、
この特別受益を考慮せずに遺産を分割すると不公平が生じてしまいます。
よって、特別受益を考慮して遺産分割を行うことを「特別受益の持戻し」といいます。
例えば、被相続人が後継者である長男に自社株式を生前に全て贈与をしていた場合、
これは特別受益に該当し、他の相続人である次男などから
上記の遺留分減殺請求を受けるということが想定されていました。
また、この特別受益の持ち戻しは、期間制限無く遡ることが出来ましたので
実施された贈与は全て遺留分算定の財産に含めることとされていました。
今回の改正においては、
この期間について相続開始前の10年間にされたものに限ると限定されました。
よって相続人が後継者の長男に株式を生前贈与し、
贈与後10年超を経過して相続が発生した場合には、
次男は特別受益の持ち戻しを求める事は出来ないこととなりました。
従来の事業承継に関する資産の承継は遺留分減殺請求のリスクを考慮し、
贈与では無く譲渡(売買)などを選択することもありましたが、
今回の改正により贈与の選択が少し進めやすくなったかと思われます。
円滑な事業承継を実現するためには幅広い法制度を理解し活用することが重要です。
ご不明な点等ありましたらお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。
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